ニューヨーク近郊の会計士 仕事日記 18 監査人・会計士とはどのようなヤツらなのか?

ニューヨーク近郊の会計士の日記

今ままで会ったことのある面白い会計士

ぬんぬん

デロイトのニューヨークで会った日本人の男性の先輩、その当時はシニアでまだ20代の後半でしょうか。純朴で落ち着いた感じの会計士だったのですがその実、中身にとんでもないむっつりスケベで、僕がそういう会話についていけるとみたらよく(という必ず会うたびに)下ネタを振ってきました。

ある日僕が事務所であるロックフェラーセンターで仕事をしていると彼も同じフロアでホテリング(従業員がフロア内の空いている任意の席を予約してそこで仕事をすること。BIG4はどこもそうなのかもしれないですが、デロイトニューヨークのオフィスでは固定席を与えられるのはパートナーの中でもエグゼクティブレベルだけのようでした)していて、開口一番、彼のセリフが「僕の隣に若くてかわいいチャイニーズ系の女の子(もちろん彼女も同じオフィスの監査人でしょう、ただニューヨークオフィスは人が多すぎて同じチームでもなければ顔や名前など一人ひとり憶えていられません)が座ったんですよ、髪の毛が凄いいい香りで、、、、 あああ、もし彼女と二人きりとかになったら僕はどうなっちゃうんだろう、、、、、、!」。

、、、一応ですが彼は既婚者で娘さんがいました。一体彼の頭の中では何が起こっているんだろう、本当にコイツはヤバいな、と思ったのですがその後彼もビザの都合で日本に帰り、外資系の企業で経理部に移ったとのことです。いつセクハラで問題になるか、本当に分からない人でした。

ジュニー

やはりデロイトのニューヨークで会った日系アメリカ人(日本育ちのためほぼ日本人)の男性の先輩、その当時はシニアでまだ30代の前半でした。いかんせん会計が好きじゃないらしく(でもUSCPAは取得していた)、「俺、この仕事ずっとはできないよ、やめたい」とか「面白くない、、、」とかよく連呼している人でした。それでも仕事はきっちりやる人でしたので会計監査が好きではないが素養はあったんだろうな、と思います。人づきあいの広い人でよく仕事以外の関係でパーティーなどもしていました。そのうちに自分のYoutubeチャンネルを開設し、アメリカやかつて住んでいた南米の文化を紹介するユーチューバーに。特にチャンネルが好調だったわけでもないのですが、突然「俺はつてを伝ってエクアドルで生活する」と宣言してしまいそのままエクアドルへ行ってしまいました。スペイン語はペラペラだったので仕事のあてもあったんでしょうが、突き抜けている人でした。

ジョー

デロイトニューヨークで一緒に働いたイタリア系アメリカ人監査マネージャー。おそらく仕事はできる人。パートナーまで確認されないような監査調書はスタッフだったブログ主がみても少しツッコミどころが残るのに突っ込んでこず、完了させてしまい、結果仕事は早く済ませてしまうある意味で素晴らしいマネージャー。ただ仕事中にお母さんと電話することが多く「Mam, that is ~~ (ママ、それはね~)」という会話が一緒に働いたスタッフ、シニアの間では何度も聞かれている。会話内容はもちろんではあるが彼の家の事情。アメリカ人はとにかく家族が一番です。

ジェイヤオ

中堅ファームで出会った中国系アメリカ人男性監査スタッフ。彼はとにかく挙動不審である。これはオフィスにいてもお客さんのところへ往査へ行っても、話すところで話さなかったり、じっとこちらや他の人を見ていたりと「大丈夫か!?」と周りの人に思わせてしまう能力があります。そんな彼ですが非常にまじめで細かい仕事もできるのですが、能力に難のあるマネージャーの目に止まりひどい評価をもらってしまい、「改善プラン」の対象に。その後ツテを使ってEYに行ったのちそこそこしっかり勤務した後、モルガンスタンレーの内部監査人となりマネージャーに昇進したという。すでに彼の給料は彼を貶めた監査マネージャーのゆうに1.5倍はもらっているであろうと思われる。本当に世の中はわかりません。

*改善プラン「Improvement plan」: ひどい評価となった監査人が評価したマネージャーから渡される代物で、これをもとにしっかりやり直せ、という意味が込められていると同時に「退職勧告」にも似た意味合いをもつ。これをもらってその後仕事ぶりに改善が見られない場合、クビになってしまう可能性が高い。

ワイワイ

中堅ファームで上記のジェイヤオを落としいれた韓国人女性監査マネージャー。いちゃもんにも近い形で部下の評価には非常に厳しい事(というよりも根も葉もないいやがらせ)を長年しているせいで一緒に働いてるメンバーからの評価はすこぶる悪い。そんな彼女も何を思い立ったかEYに移り、中堅ファームでのマネージャーの肩書からEYでのシニアポジションに格下げとなったもののBig4会計士として働いていた様子。その後に人づてに話を聞くとEYのチームメンバーからかなり嫌われ一年くらいでクビになったということでした。まあ、因果応報ってことかもしれません。

オルテガ 

中堅ファームに一年生として入ってきたベラルーシ人の女性。30代半ばくらい、3児の母で一番上の子はもう中学生くらいだという。1つの事を伝えると30個くらい理解してしまい、特に何も言わなくても調書を次々と仕上げてしまう超秀才である。経理の経験は旦那さんの運営する運送会社でやっていた程度である様子だが、スタッフ1年目の時にはCPA試験にも(難なく?)合格してしまいスタッフ2を飛ばしてシニアに昇格、もうファームの期待の星といえる。

面白いのはこういった得難い人材がたまに存在すること。どこの大学を出た、とか華々しい経験がある、とかではなく、本当に実務を行う実力のある人間が専業主婦だったり、子育てに全力を尽くしていたりするんです。彼女は正直覚えのあまり良くない大卒3人分以上の実力があったりすると思っています。よく話を聞いてみるとベラルーシでは大学2校出ても仕事がなくウェイトレスなどのブルーカラー職種くらいしか機会がないらしいです。そんななか彼女にしてみればアメリカで機会をつかむことは大きな希望だったようで、頭のいい彼女はアメリカへの留学機会を経て、結婚など(それだけじゃないようですが)を経てうまく米国在留資格を得られたということでした。「やはりハングリー精神が全然違うな」と感嘆してしまったブログ主です。


いかがでしょう、もちろんこちらで紹介したのはほんの一部の方々でまあ会計士と一口でいってもその個性は本当にさまざまです。面白い人は現在進行形でも身の回りにはいっぱいいますね。特にアメリカでの生活の仕方は働き方を気にするというよりも私生活に重点を置く人が大半なので仕事に全力投球という人は日本よりかなり少ないイメージです(Big4の独身の若者には仕事100%の人もいっぱいいましたが)。

最後に日米監査人の違いなのですが、僕が分かるレベルでお話しします。デロイトで働いていた時は日本から事務所間の交換留学みたいな感じで日本のトーマツ監査法人から日本の会計士資格をもったバリバリの会計士がこちらの日系チームに入って監査に入っていましたが、その時の彼らの仕事ぶりとアメリカの監査人の仕事ぶりを比較したものですがこれもかなり独断と偏見が入っているのでご注意ください。

細やかさのレベル: 日本人会計士のほうがかなり細かいと言えそうです。調書のレビューをしても指摘項目がかなり細かいところまで及びます。アメリカ会計士なら監査の大筋に関係ない部分までは気づいても部下には指摘しないし、流してしまうところですが日本ではそういうわけではなく「どうにか気づいてほしい、直してほしい」という気持からか指摘してしまうようです。レビューする立場からすると、レビューノート(指摘事項を伝えるメモ)を書くのもエネルギーがいるんです。その人に良くなってほしいと真に願うか、マウントとりたいか、いやがらせをしたいか、このうちのどれかのモチベーションがなければレビューノートを付ける気力は起こりません。

また、日本会計士の仕事に対する徹底ぶりですが、僕がトーマツからの駐在会計士と一緒に仕事をしていた時にとある調書を仕上げていたのですが、少し面倒な手続きのもので、時間も差し迫っていたので僕の調書をレビューするのその先輩に「できるところまでまずやって提出します」という風に提案したのですが「完璧でないものに(上司の)レビューを依頼するのですか?」とプレッシャーをかけられてしまいました。部下にとってこんな質問にノーとはもちろん言えませんので、可能な限り完璧なものを作るって出す以外選択肢なしです。「これが日本の監査業界の仕事の仕方かあ」と思いました。もちろん100%に近いものを仕上げる能力を磨いたり、練習したりというのは必要な要素ですが、いつも有効な手立てではなく、個人的には早い時間で80%のものを作ってそれをわかる人にレビューしてもらったり、直しのアドバイスをもらう方が全体の効率や個人の成長にはいいと思っています。何よりやる気を削がれませんしね。仕事風土をよく表した一言だったなあ、と思っています。

仕事から消えるはやさ:アメリカ人会計士はとりあえず仕事は早く終わらせます。というか仕事よりもプライベートが大切なので仕事に残るための「理由」が必要なのです。方や日本人会計士ですがプライベートより「仕事」に重きをおいているためまず仕事に時間も置きがちです。基本的には転職を念頭において仕事をしている会計士がアメリカと違い少ないからでしょう。「早く帰る」という意味でも「別の職場へ移る」という意味でも仕事から消える早さはアメリカ会計士の方が圧倒的です。

忘れられない印象的な会話があります。僕がデロイトのNYオフィスでスタッフとして働いていた時で、この日も遅くまで働いて確かもう22時も回っていたと思うのですが、一緒にオフィスにいたという事で別の監査チームを担当する日本からの駐在シニアマネージャーGさん(男性)とローカル採用の日本人シニアマネージャーYさん(女性)、そして同じチームのシニアNさんと居酒屋で飲んで帰ることにしました。僕は誰かと飲んだりして帰るのは基本大好きなのですがこの日はかなり疲れていて、珍しく「飲みたい20%:帰りたい80%」くらいのテンションだったのですが、「まあいいか、付き合おう」くらいの感じでその4人でNYの日本居酒屋へ繰り出しました。

居酒屋での話の流れとしては駐在の男性シニマネGさんの話をまわりが気遣う感じで聞くというトーンで、彼が独壇場で話をしている中、彼の奥さんが子供の出産するときに話になりました。だいたい言っていたことは「大事なミーティングやってるときに嫁がなんか産気づいて病院に運ばれたらしいんだけど、もちろん俺は仕事優先でそんなんかまってるヒマなんてないから、もう勝手に産んどけや、みたいなテンションだったんで、、、」という調子で、これを聞いていて僕としてはもう気分が悪くなってしまいました。もう圧倒的な仕事優先論、同席していたローカルのシニマネYさんは女性でその当時出産もされています。彼女は一体どういう気持ちで彼の話を聞いていたのか、、、。

昔のモーレツサラリーマンの文化がまだ日本に残っていることはもちろん知っていますし、監査法人でも大手などはそういう空気だとはきいてます。僕自身もそういう中で新卒時は働いてましたが、いくらなんでも今日び家族やましてや子供の出産というイベントに対して旦那のこのようなあしらい方はないだろうというものです。彼は当時シニマネですが年齢自体はその時の僕とそれほど変わらないはずでした。これだけ家族への時間や愛を削れる分、素晴らしい(?)会社を愛しまくるというカルチャーがある限り、日本人は仕事からはなかなか離れられないだろうな、というのが僕の印象です。疲れていましたが、Gさんと一緒に飲んでさらに疲れてしまいました。

監査業界へのそもそもの入り口と職業コミットメント: 会計士になるにあたってそもそもの入り口も日米では相当違います。アメリカでは大学で会計を学びUSCPAの受験資格をもっているかどうかが重要なポイントになります。Big4などでは会計で大学院をいい成績で卒業しているかどうかなど重要な基準としてみている節はあります。それはそれでハードルが高いのですが、それでも日本は基本的には激ムズ資格である日本の公認会計士試験の2次試験まで合格していることが前提です。日本の会計士試験は言語の違いなどをさっぴいてひいき目にみてもUSCPAよりもはるかに難しいです(だから日本の会計士は結構あっさりUSCPAにも合格したりします)。それ程に高い難関を乗り越えた”超優秀な学生”を中心に採用しているわけです。

日本がこれだけの成果を監査法人の就労の条件として課すのであれば当然、監査法人ではたらく会計士は監査人として生きていくことに対し強いコミットメントを持ち、転職や他の生き方についてはあまり考えないかもしれません。アメリカでは就業前に日本の会計士試験よりかなりやさしいUSCPAを合格さえしている必要さえもないのです。アメリカの会計事務所なら一定の素養をもって就職し会計が好きならUSCPAを取得して管理職になってパートナー目指して、、と続けてもらえばいいし、「監査なんてあまり合わないな~」と思ったら資格などにコミットせず別の仕事を探しいくという、もっと自由でフラフラできるカルチャーと言えます。そんなわけで入口やハードルの点でも日米ではずいぶんと違うのです。

こちらのブログ主はアメリカの会計業会に興味のある方や、アメリカで働きたい方へボランティアで相談に乗っています! 興味のある方はコメント欄やツイッター・X(@Larkey_Larkey)からご連絡ください!

この記事がよかったら下のバナーをポチっと!

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました