さて要件の1から7まで説明させていただきましたがどれくらいに経費がかかるものであるか計算していきましょう。一応、最安値を狙ったものをシュミレートしていきます。また、ここでは#1の4年制大学を日本で卒業している、にあたっては割愛し、すでに大学卒業者が#2以降をこなしていく計算をしてみます。
#2 &#3
英語、簿記の基礎勉強ですが、基本的には独学でも可能です。となると英語と簿記(2級、3級)でそれぞれテキストや問題集が必要ですが、そんなに何冊も必要ありません。英語力などはもともとTOEICで何点くらい取れるか、その当初の英語力もかなり響くかと思いますが、初級者が中級者とされる600点程度まで引き上げるのにテキストと問題集で、別の学習教材セットを800点まで引き上げるのに必要として、それでもトータルで10,000円に収まるかと思います。簿記も同じようなイメージですが、3級用と2級は商業簿記、工業簿記にわかれます。10,000円の想定で十分ではないでしょうか。
簿記は最初は少々頭に入りにくい概念でスクールを利用して間違った理解をしないようにすることもよく推奨されています。ですので最初にスクールを利用するのも一手かとは思いますのでその場合の必要額はここでは割愛します。
#4 
これはUSCPAのスクールを利用する以外には難しいかと思います。是非上記#2,#3が完了し次第スタートしましょう(実際、相応の英語力と簿記力がないとうUSCPAは太刀打ちできませんよ。これは僕の実体験から申し上げておきます)。
日本で今現在利用できるUSCPAスクールは現在TAC、大原、Abitas、などがあるようです。価格についてはコースやオプションなども含めると複雑なようですが、大まかにはUSCPA対策コースと、必要な大学での会計、ビジネス単位を取得するためのサービスがあるようです。どの学校も単位取得サービスはあるようですが、比較的安価なものから大原のWebコース:499,400円(24単位込み)、TACの総合本科生Plus:494,000円~525,000円(単位は別、3単位あたり18,000円)、高いところでアビタスのスタンダードパック(6科目18単位込み):616,300円ということのようです。
細かな比較はUSCPAどこのブログさんにお譲りしますのでこちらを参照していただければと思います。ここでのデータはすべて2023年7月時点のものです。
個人的なおススメは僕が実際に使用したアメリカのUSCPA対策コース、BECKERの問題を利用したTACのコースですが、ここではUSCPA取得が主眼ではなく会計事務所での面接に向けた受験要件を満たす大学の単位取得を目的としていますので、その視点からお話します。同時に無視できないのが教育訓練給付金制度です。これは雇用保険に加入している(していた)方が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、修了された場合に、自己負担総額の20%(上限10万円)が支給されるというもので、少しでも料金を節約したい方は必須の制度でしょう。この制度を利用できるのはAbitasとTACになるようです。
アビタス、大原はUSCPA対策コースに一部単位取得料金も組み込まれてしまっているため率直な比較はしにくいのですが、とりあえず教育訓練給付金制度がUSCPA講座で使えない大原は除外し、安い方を選択してみます(足りない分はアメリカ現地でOPTプログラムと一緒に取りにいく想定)。
アビタスのスタンダードパックに組み込まれている18単位をTACで取ろうと思えば3単位x6科目x6,000 + 入学金7,000円なので 115,000円ですね。そうなるとTACのUSCPA学習のウェブコースと合わせ総額で609,000円(消費税等は無視)となりますのでアビタスといい勝負ですが、TACの方が少し安そうです。この数字に教育訓練給付金10万円が適用されたと仮定し、50,9000円を使ってみます。
#6 & #7
想定が難しくなってくるのがここからですね。ここでは9か月のサーティフィケイトプログラムを受けるとして、授業料だけではなくそれに伴う居住費、移動費、テキスト代、保険料、その他必要な生活費なども考慮しなければいけないでしょう。
一番安い想定を安易に出すのは難しいと言えますがモデルケースを出してみましょう
アメリカ留学.comのサーティフィケイトプログラムの紹介ページから学費等についてはモデルをいただきます。
カリフォルニア州のカレッジオブデザート(College of Desert)でのケース:
航空費 140,000円
一年間の居住費 ホームステイ(食事付き)の場合 $8,000($1 = 140円計算)1,120,000円
授業料 2セメスター $7,800 / 1,092,000円
保険料 $1,692 / 236,880円
教材費 $500 / 70,000円
その他学校諸経費 $1,000 / 140,000円
生活費、交流費、及び雑費 一か月$800で計算 1,344,000円
合計 4,142,880円
これがざっと計算したアメリカでの一年間の経費となります。
上記をすべて計算していくと
簿記、英語の独学料 20,000円
USCPAスクール料 509,000円
アメリカでの授業料及び生活費諸経費 4,142,880円 2023年7月時点
総額で4,671,880円となりますね。もっとも重要で基礎となる英語と簿記の勉強にかかる経費が他の比べると圧倒的に安いのはちょっと面白いですね。
アメリカで何かアクションを取ると物価高もあり特に高くなります。少し乱暴な計算ですがこれがアメリカの会計事務所に入り、会計士監査人候補として年収$60,000(8,400,000円)からのスタートするキャリアを始めるために必要な経費とみていただければいいかと思います。高いと取るか、安いと取るかはまさに見る人次第といえるでしょう。
もしH1-Bに落ちてしまったら?
ざーっとプロセスを見てきましたが、正直言って金銭の問題を除けば最大の難所は間違いなくH-1Bの抽選でしょう。抽選であるだけに対策の立てようがないからです。他のことは効率的に勉強し、しっかりとリサーチさえすればお金と時間はかかるかもしれませんが何とかなることが多いです。日本の会計士や弁護士になるために必要なものすごく明晰な頭脳を持っている必要はありません。
さてではもしH-1Bビザに落ちてしまったら? これは難しい問題です。通常のOPTは1年の期間、H-1Bの抽選は年に一度(春)、つまり一度のOPTで1回しか抽選チャンスはありません。学業に戻ればまたあらたなOPTを取得できると思いますが、資金の問題があればずっとそれを続ける事はできないでしょう。OPTが切れれば授業料を払う限りはF-1 ビザがあるのでアメリカの残ることはできますが、働くことはできません。
ここで提示できる案は2つ:
1 会計事務所によるが日本の会計事務所と提携があれば一時的にそちらに移籍して働く
2 日本に戻り、アメリカでの経験を活かしてキャリアを積む。
#1の選択肢ですが、BIG4をはじめ少なくない会計事務所が日本のある会計事務所と提携関係や日本に事務所を持っていたりします。ですのでこうしたビザ落選問題はよく認識されていて、対策として一時的に日本に移籍してもらい、日本にいながら再度ビザ取得などのチャンスを与える事があります(もちろん人によっては日本のBIG4などにそのまま残ることもあるでしょう)。大手でなくとも日系企業を担当する独立系会計事務所EOS Accoutantsなどは日本事務所を設置しており、アメリカに残りたいフルタイムワーカーに日本にいながらアメリカのビザ取得の機会を提供しています。
アメリカで働きたい方にとってはもちろんビザが取れなければ残念な気持ちになるかもしれませんが、会計士として日本の会計事務所に勤めることができればそれはそれで悪くないキャリアの始まりだと思います(特にBIG4は社会的にもエリートですよ!)。そういった点も考慮し、僕がここまで記述したようなキャリアプランを実践してみるのはそれなりの価値はあるのではないでしょうか? かくいう僕もいろいろな人の助けを得て上記の挑戦に挑んだ一人です。
何か質問があったり、チャレンジしようと思っているがもっと情報が欲しい方は是非連絡をください。可能な限り回答させていただきます!
コメント