ニューヨーク近郊の会計士 仕事日記 6 監査人の昇給と昇進について マネージングディレクター・パートナー編

ニューヨーク近郊の会計士の日記

こんにちはー 駆け出しブロガー、らーきいです。

現在僕はUSCPA監査人としてアメリカのニュージャージー州の会計事務所にて主に日系企業の監査、レビュー業務に携わっています。

どんな仕事でも組織で働いていると上下関係や役職といったものが多かれ少なかれありますよね!
会計士監査人もやはり同様でございます。

さて、今日は前回の続き、監査人の昇給と昇進なのですが、ここでは監査法人のトップ、マネージングディレクターとパートナーというポジションについて書いていきます。記事内の給与額や円換算為替などの金額情報は2022年秋から冬くらいの情報に即しております。アメリカでは毎年物価や給与はインフレして漸増しますのでご注意を!

監査人の始まりはスタッフから始まり、シニア、マネージャーというポジションを経てパートナーやディレクターというポジションに至ります。ここまででの道のりはほとんどの人にとって平坦ではないはずです。どんなファームであれトップポジションへ行くには長時間にわたる業務、技術習得、社内政治などを乗り越えやっとたどりつく境地、それなりの努力を要してやっと手にできる地位なのです。

その難易度はもちろん事務所の規模にもよりますがBig4であればパートナーの給料は1年目から5年目で$300K(3,900万円)-$500K(6,500万円), 6年目から10年目で$400K(5,200万円)-$1,300K(16,900万円)と$1ミリオン(1億3,000万円)を超える可能性もあり、10年目以上だと$600K(7,800万円)ー$3,000K(39,000万円)と大きく差が開いてきます。ここまでくると流石にアメリカンドリーム感がありますね。一応ですがこれは宝くじのようにワンタイムではなく年収なので毎年もらえる報酬です。

ただそこへたどり着くには業務、会計監査への精通はもちろんの事、社内での評価や上位パートナーから引っ張ってもらうための営業力(社内政治は強烈に存在します)、そして顧客の規模や数によりパートナーの数も決まってくるため、先輩パートナー引退者がでてくるかどうかのタイミングなど、実力以外の運の要素もたくさんあり、そう簡単にはなれるものではありません。特にBig4の出世レースは苛烈であり、入所3年目のシニアなったくらい(!)からどの上位パートナーに取り入るか、アドバイザーになってもらうか、どうやってビッグボス達のお気に入りになろうか、など、Big4で監査人の大ボスになろうと決めた方々は果てしない長時間労働のかたわらゴマすりパワーを遺憾なく発揮していきます。これは日本独自の風習でもなんでもありません、可愛がられた人間が上に引っ張ってもらえる、というのは間違いなく古今東西の真理でございます。

そしてパートナーはエンゲージメントにチームに対する絶対的な権力と高額の年収が約束されている上、年金などの保障も相当に優遇されている役職であり、シニアマネージャーまでの高い離職率に対し、パートナーまで上がってくると辞める人はほとんどいない、という職位でもあります。

その職務はエンゲージメントに対して最終責任を負う事であり、重要な調書のレビューと各契約書類のサイン、またエンゲージメント関する重要な決定事項や顧客との折衝、アドバイス、エンゲージメントマネージャー(もしくはそれ以下のチームメンバーも)の任命、その他重要人事、人事考査に給与、賞与査定、事務所の重要方針の最終決定など事務所内では最高権力を振るいます。また、顧客への営業や契約料金の取り決め、新規ビジネスの獲得など、このあたりはマネージャーレベルにも指示を出したり引き連れながら推進していきます。

良くも悪くも最高権力なので既存顧客や上位パートナーなどからのプレッシャーも並々ではないでしょうが、椅子の座り心地は相当に良いはずです。

いきなりパートナーの話をしてしまいましたが、じつのところパートナー手前にマネージングディレクター(事務所によってディレクター、プリンシパル、など呼称は様々)というポジションがあります。この役職がやることはエンゲージメントの仕事については実質的にパートナーと同じ、もしくはパートナーの補佐です。外向けの仕事だけでなく事務所内でもパートナーに準じ相当の力を持ちますが、どこまで重要事項に関連できるかどうかは各事務所を大きく違うでしょう。

このマネージングディレクターですが給料はニューヨークエリア平均で$274K(3,562万円)とパートナーには劣るもののシニアマネージャーと比較すると2倍弱くらいの高給となります。

エンゲージメントにおいてはパートナーもディレクターだいたい同じポジションというイメージですがそれでは何が一体違うのか、というとズバリ、パートナーは事務所のオーナーであり、ディレクター以下は従業員である、という点に尽きます。

つまりビジネスオーナー(兼経営者)なのか、サラリーマンであるかの違いと言い換えられるでしょう。シニアマネージャーからディレクターへの昇進に責任感が大きくなること以外別に代償がないのに対し、パートナーになる、ということは事務所の持分(普通の会社であれば株式に相当)を購入、保有することになります。どれくらいのお買い物かと言えばBig4であれば平均で$150K(1,950万円)、これもポジションやファームの取り決めによるようで、高額な場合だと$750K(9,750万円)にも上がることがあるようです(関係者からのまた聞きや、ネットリサーチの結果です。正直のところホントの話はわかりません、、、こわくて本人に聞けないし)。

いくらシニアマネージャーやディレクターレベルの報酬が高額とはいえ、自分の貯蓄からこれだけポンと出せる人も少ないので、ほとんどの一年生パートナーは事務所から借金をして持分を購入、オーナーとなり、給料から毎年少しずつ返していくんだそうです。

デロイトではシニアマネージャーとして十分な実力を認められ、ポジションの空席にも恵まれた場合はディレクターになるかパートナーになるか選ぶことができると聞いたと思います。上記の違いは一番根本的なものですが、それでもパートナーの待遇は従業員と比較すれば破格なものです。

では一旦パートナーとなればそこにリスクはないのか?といわれればあります。それもズバリ訴訟でございます。

監査の仕事とは顧客の財務諸表に対し、その健全性に保証を与えるということにつきますが、ではその健全性が全くのウソであるということが発覚したら? つまり「この会社の財務は安全です!」と宣言しておきながら実はとてつもない巨額の隠し負債がありました、などという状況が明らかってしまった、という感じですね。そうなるとその会社の株主から「この監査人め、ウソツキやがって!!」と訴えられてしまいます。ファームのオーナーであるパートナーは訴訟が起これば、監査の顧客である会社経営陣と並びまず矢面に立たされるポジションです。もちろん個人的な金銭的損失も起こり得ます。特に上場企業の監査については不特定多数の株主がいますからそんな不祥事が起こるとすぐ集団訴訟に発展すると言われます。

上場企業の経営陣は株価が下落すればすぐに退陣させられてしまいますので経営陣サイドも見栄えのいい財務諸表作りに必死なわけです。そうなるとそれを見破らなくてはならない監査人のプレッシャーも半端ではないでしょう。逮捕権を持っているSEC(米証券取引委員会)やら、泣く子もだまると言われるIRS(米国歳入庁、いわば日本国税の傍若無人バージョン)の目も意識しなくてはなりません。その監査意見の最後の責任を持たねばならないパートナーの重圧も推して知るべし、ということでしょうか。

シニアマネージャーまでとの違いからさらに事務所の規模により待遇の差が変わってくるのがこのパートナーポジションでもあります。中小規模事務所ではシニアマネージャーの給料はおそらく$130K(1,690万円)くらいが関の山ではないかと思うのですが、ではパートナーになったらいくらもらえるのかと言えば$150K(1,950万円)から$250K(3,250万円)程度が多いと言われます(一般的には高額ですがBig4や準大手のパートナー給料と比べると激オチするところに注目)。

このあたりは上場企業に対する監査重圧がない(中小規模の事務所は人員数や技術的な面から上場企業の監査をするのは困難)という点もあるでしょうが、非上場企業への監査は法的に強制されているわけでもないため規模の面からも報酬はかなり低い、という点は関連しているでしょう。同じ監査パートナーといえど事務所の規模によってやはり報酬とリスクという点には大きな違いがあるのです。

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