ニューヨーク近郊の会計士 仕事日記 17 アメリカの会計事務所の採用の現場で

アメリカで就労するためのビザについて

ではインターンなり、スタッフ1年目なりを採用する米会計事務所側としては一体何を見ているでしょうか? 気になるところだと思いますが羅列していきましょう。

1.CPA受験資格
2.学歴・GPA
3.簿記会計の基礎知識
4.英語力(日本人候補者の場合)
5. 素直に知識を吸収していける人材か否か

他にも服装や態度、常識を一定レベルでわきまえているかどうかなど細かな点を挙げればきりがないかと思いますが、そういった大枠として問題ない方であるという前提として、その上で上記項目は面接官の共通認識として候補者に対して求めている能力です。少なくともこれらの項目がしっかりしていればインターン候補として弾かれる可能性は少ないと言えます。一つずつもう少し細かく見ていきましょう。

1.CPA受験資格 まず会計事務所の監査部門で従業員としてフルタイムとして採用される場合、通常は将来は管理職以上になることを期待される立場として扱われます。そのためにCPAを持っていることはマネージャーとしては必須条件となりますが、採用の段階ではCPAに合格している必要はないものの、CPAを受験できるだけの学歴があることが通常求められるのでそれに即した学歴、経歴を持っていることが採用の前提となります。特にアメリカ国籍やグリーンカードなどの有効なビザを持っていない場合はファームを通じてH-1Bという就労ビザの発行が必須となることが通常です。その際にファームは従業員のために弁護士を通じてビザの抽選手続きを行いますがこの抽選手続きに参加するにも専門性のある修学を専門機関や大学で行っていることが条件になりますので、ファームは会計、税務、監査関連の専門科目を一定履修しているか(=CPA受験要件を満たしている、もしくはそれに近い状況か)を必ず見てくると思ってください。監査部門ではこのように考えることが多いのですが、税務部門などは事務所によってはEnrolled Agent(EA、タックスリターン代理申告する資格)でもOKであったりするらしいです。しかし大手になるほどこのあたりついてはCPA受験資格を求められてくると考えたほうがいいでしょう。

2.学歴・GPA 学歴については#1ともかぶりますが、GPAも大事な要素の一つです。BIG4だとおおよそ3.5以上であること、その他のファームでも3以上を維持していることは期待されます。それ以下だと面接官の視線が厳しくなるかもしれません(笑)。もちろん選考要素の一つであり、GPA2.0台だったら絶対に採用されないという事ももちろんないのですが、レジュメにこのあたりを書かない場合、面接官に突っ込まれる可能性は大です。

ブログ主の経験ですが、日本の就職と違いアメリカでは必ずGPAをチェックされると聞いていたので日本の大学の成績がGPA2.0台だった(日本では問題なく就職できた、、、)僕はアメリカの就職に臨んだ時、相当アセりました。まあ、これは学歴ロンダリングは必須であると気付き、アメリカでAccounting certificateをを取得する際はオールAを狙えるようにそれはもう必死こいて授業参加と試験対策したものです、、、、、(結果ですか? Intermediate Accounting II だけBになってしまいました。残念!)

3. 簿記会計の基礎知識 これも#1,#2と関連しますね。しかしここではもっと実務的なポイントと考えてください。もちろん学校できちんと簿記会計の知識を身に着けていることは必須ですが、面接官は簿記の基礎的な知識を聞いてくることがあります。例えば「前払費用はBS科目、それともPL科目?」「減価償却について説明してください」「貸倒引当金について説明してください」などなど。もし経理実務についていた人なら難なく答えられるものですね。簿記をきっちりやっている人にとっても大丈夫だと思います。インターン、スタッフレベルであってもこのくらいの質問に答えられなければ黄信号です。これがもし監査のスタッフ2以上、シニアなどの採用面接であれば、「ファイナンスリースとオペレーティングリースの判定基準は?」「Unrecorded liabilities(隠れ負債)テストのプロセスと仕組みを説明しなさい」など少し高度な質問になっていくでしょう。でもしかし、日本で会計事務所に入りたいと思ったら通常日本の公認会計士資格を持っていることが前提になっていたりしますので、それに比べればアメリカの採用基準自体は大分レベルが下がるとみることはできますね。

4.英語力 これは少し特殊な科目かもしれませんがアメリカの会計事務所で働く以上は当然一定の実力を求められます。そもそも英語で面接をする場合もありますが、日系部門、日系ファームでの面接は日本人同士の面接になることも多いので、面接自体を日本語で行うケースも必然的に多くなります。その場合でも最低限の英語能力(会話能力)は面接で試されます。これは特に英語圏の滞在が短い(2年以内)場合などには重要対策となる可能性があります。

5.素直に知識を吸収していける人材か否か さて、個人的な所感が入るもののこの項目は上のどんな項目よりも大事だと思います。もっとも上の項目はレジュメの確認や面接をすればある程度検証可能なんですがこの項目ばかりは実際一緒に働いてみないと推し量れないところなので難しいですね。おそらくどの業界でも同じでしょうが、実務経験を積むまではほんのさわりで、実際に働きはじめてからお金を稼ぐ上で必要なスキルを積み上げていくことになります。その知識と技術は非常に膨大であり、特に僕らのようなプロフェッショナルファームと呼ばれる場所では毎年毎年情報の更新や、習得に時間のかかるような技術を時間をかけて積み上げていくような作業が続きます。ですのでまだ働き始めてもいない段階から慢心していたり、頑固で自分のやり方にこだわるような人材だと一緒に働く身としては困ってしまうのです。柔軟で教わったことをしっかり身に着けていける素直な人材をファームとしては望んでいます。この業界はやり方を先輩から教わらずにできるようになるような仕事はあまりないからですね。ですので面接ではこの点をしっかりアピールしてもらうと同時に、本当にそのように心構えを作っていただくのがベストでしょう。

ざっと新入生に求める基準を書いてきましたが僕が面接官であれば上記項目がしっかりしていて、誠実な人材であれば採用しない理由はないと考えます。上記にはあえて書きませんでしたが「誠実さ」というのは#5とも少し関連すると思いますがチームメイトとして最重要視する要素です。上記の全部を完全に満たしていたとしても、悪意のある人間であった場合、仲間としては明らかに不適切です。逆に能力が高い分、チームやファームに対して悪意がある人間はいつか周りの仲間に深刻な害を及ぼします。逆に能力値がそれほど高くなくても誠実な仕事をする人間には一定の仕事をお願いすることができるでしょう。誠実さというのは一度や二度の面接ではほとんどわかりませんし、見抜く事は難しいでしょう。ですが個人的には日々の仕事は誠実な人達としたいと考えていますね。僕のファームには同じような考え方の人たちは多いと思います。個人的な印象なのですが、BIG4の監査人は能力が飛びぬけて高い人が多いのですが、そういう意味で働きやすい方々というのは若干少なくなるような感じはしますね。誠実さにもとるというよりも、プライドが高いからかもしれません(もちろんBIG4のみんながみんな、というわけではないです。いい人はたくさんいます)。あくまで個人の印象ですが。

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コメント

  1. BSACC より:

    初めまして。個人的なご相談をさせていただきたいのですが、どのような手段がよろしいでしょうか?

    • lucky_blog lucky_blog より:

      こんにちは ご相談を寄せていただいてどうもありがとうございます。もしツイッター(X)をされていれば@Larkey_Larkeyからご連絡ください。gotmygrails@gmail.comにメールいただいても大丈夫ですよ!

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