日本人がアメリカに来ていきなり職を見つけられるかというと、いくつか過程を乗り越える必要はあります。
というのも外国人が正規として働くにはもちろんビザや労働許可が必要になるからです。大都市に行けばバイトとして現金払いで働ける場所は多いでしょう。ヒスパニック系の外国人もフードデリバリーやコネのあるレストランなどでものすごい数の人たちがビザなし労働をして、その稼ぎを母国に仕送りを送金しているようです。コネがなんとか見つかればビザがなくても、このようにどこかで働ける可能性は低くないと思いますが、もちろんそうした場合、社会保障や一般的な社会人としての福利(保険や住宅ローンの借入など)を受けることはもちろんできませんし、クレジットカードや銀行口座を作ることさえできません。きちんと法的に認知された存在となるために外国人にはビザが必須です。
ここではどのようにビザを取得し、就職につなげていけるかを書いてみたいと思います。
ビザを取得する
正規に雇用を目指すのであればまずビザの取得が必要です。ビザの種類はたくさんありますが、現実的に取得ができるものを列挙してみます。
1.F-1 アメリカで学業を行うためのビザです。基本的にはこのビザで働くことはできませんが、キャンパス内での限られた時間(週20時間)であればOn-Campus Employmentとして労働が許可されます。またF-1ビザで学業を履修したうえで、CPT(Curricular Practical Training)、OPT(Optional Practical Training)といったキャンパス外の一般企業でのトレーニングを行うためのビザを申請することも可能です。その際にはF-1ビザの状態から企業にインターンシップなどの申し込み、面接などを経て採用されたうえで、CPT/OPT申請を行うことになります。基本的にはこのビザは自国での取得をした上でアメリカにくる形となります。
2.H1-B 外国人が米国企業に採用された場合、多くの企業ではまずこのH1-Bを当該社員に取得させるよう支援してくれる場合があります。このビザは毎年米国移民局(アメリカ政府)による抽選形式にて付与がなされます。毎年春に企業のスポンサーを受けた希望者が抽選に参加し、会計年度2021には約275,000件の当選、及び登録者が出たようです(ネット調べ)。うち45%が修士取得者、そのほかは学士習得者とのことでした。大卒でない場合は例外を除き対象外となってしまうようです。
3.グリーンカード いわゆる永住権ですが、選挙権がない、陪審員義務がない、更新の必要性があるなどの違いを除き通常生活においてはアメリカ市民にかなり近い権利が与えられます。一定期間の労働を通じて企業から申請をすることも可能ですが、アメリカ市民との婚姻を通じて取得もできます。また、誰でも参加可能な米国政府による抽選も実施されており、個人的な知り合いも複数人この抽選でグリーンカードを取得しています。
上記で述べた以外にもアメリカのビザの種類は無数に存在していますが、私の会計業界身の回りで話に聞くようなビザというと大体上記のものになります。
就職までの流れ
個人的に最初アメリカで就職を試みようとしたときは「ESTA(観光ビザ)」で入ってその間に企業の面接を受けて、そこで何かしらのビザを手配してもらったらそのまま働けるんじゃないかな、などと考えていましたが、私が入国した2011年の段階でそのやり方でもぐりこめるのはやはり不法労働の類だけだったと思います(もしかなり特殊な才能や必要とされる経験、能力があり、資力のある企業が全面的にバックアップしてくれるならそういうこともあるかもしれませんが、、、)。
ですので一般的なビジネスマンとして地元企業に採用面接からスタートするのであれば、アメリカに入国した段階で観光ビザではない何かしらのビザが必要であり、そのビザの目的に沿った活動をしている必要があります。通常はF-1を日本滞在時に取得し、アメリカで何らかの学業を習得しながら面接の機会を伺うのがおおよその流れです。業界にもよるかと思いますが、企業はまず未経験者を雇う場合、大学でその系統の学習を積んでいる人材をインターンとして採用します。なお、ビザ問題の無関係なアメリカ市民や、すでにグリーンカードを持っている外国人が手続き上、優先されるのが通常です。F-1保持者であれば一定の期間就学している場合、企業の雇い入れによりCPT/OPTの付与が可能ですので、企業の採用担当者もそれを承知で採用通知を出しますが、もし観光ビザの候補者が面接をした場合だと、その候補者が働くためのビザをタイムリーに支給できないので企業側としても採用は難しくなるかと思います。
上記の流れで、インターンとしてうまく採用となった場合、一定期間の試用期間を経て、フルタイム(日本でいう正規雇用)での採用か、それとも不採用かの判断が企業のよりなされることが多いでしょう。採用となった場合、企業の人事部や法務部の手続きを経て上記で説明したH1-Bビザの申請手続きとなります。学士か修士かで有利、不利はあるもののプロセスは純粋な抽選となっているようです。もっとも企業により、そういったH1-B抽選プロセスをきちんと行ってくれるところ、そうしたサービスをしないところ、してくれるにしても弁護士費用の一部を給料から引いたりするところと、企業のよってその仕組みはさまざまなようです。私は当初採用してくれた会計事務所はBig 4と呼ばれる大手でしたのでビザサポートは無料で全面的に面倒みてもらいましたが、中小、中堅規模となるとすべてこのような形ではないかと思います。
一度H-1Bビザを取得すれば最長期間6年は労働可能、手続き面倒なようですが、転職もできます。大学院卒か、学士号と5年以上の職務経験があれば当該ビザからグリーンカードへの申請もできるようになるようです。
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